たとえば鉄の過不足を診断する際に、現代医学では一般的にヘモグロビンや血清鉄の値が基準値内に収まっていれば、鉄欠乏はないと考えます。

しかし血清鉄とは、臓器やタン白質に貯蔵されている鉄(貯蔵鉄)がヘモグロビンの合成や組織での利用のために運ばれている状態のものです。したがってその値は運搬中の鉄量であり、体内にあるすべての鉄量を示すものではありません。むしろ、体内にある鉄の3分の2がヘモグロビンに、残りの大半が貯蔵鉄に含まれているので、血清鉄はほんのわずかな量でしかありません。しかも血清鉄は運搬中の鉄ですから、貯蔵鉄が少しくらい減ったところで、値は大きく変動しません。

体内で鉄が不足してくると、まず減るのが貯蔵鉄、次に減るのが血清鉄、そして最後はヘモグロビンが作れなくなって、鉄欠乏性貧血が起こります。したがって、鉄不足を初期段階で見つけるためには、貯蔵鉄をチェックしなければなりません。逆に、血清鉄の値が基準値を下回っているようなら、すでに深刻な鉄不足です。

貯蔵鉄の値を示す項目が「フェリチン」です。フェリチンは鉄を貯蔵するタン白質で、身体の中の鉄の減少を、血清鉄よりも早く、そして正確に反映します。ですから、血清鉄の値が低くなくてもフェリチンの値が低い場合は鉄欠乏と診断すべきなのです。

このように、栄養素の過不足を判断するうえでは、血液中の液体成分に含まれる血漿レベルの濃度よりも、細胞レベルでの濃度を診る方が重要になります。にもかかわらず、医学者の多くは、血漿レベルでの濃度しか診ていないのです。

実は、分子整合栄養医学的に一番問題だと考えているのが、このフェリチンの基準値です。基準値については母集団がばらけていることから範囲が広く、そうした中でもフェリチンは、検査会社によって多少の幅はあるものの、女性の基準値が1ミリリットルあたり6~167ng(ナノグラム=10億分の1グラム)と、かなり幅広い設定になっています。

フェリチンは鉄の貯蔵量を表す項目ですから、月経のある年代の女性は当然値が低くなります。逆に閉経後の女性になると大幅に上昇し、1ミリリットルあたり100ngを超えてきます。母集団には、閉経前の人と閉経後の人が両方含まれますから、基準値の範囲が広がるのは、ある程度は仕方のないことかもしれません。が、問題は下限の値です。6ngというのはあまりにも低すぎます。70昭を下回れば、鉄欠乏の症状がいつ現れてもおかしくない状態になります。

分子整合栄養医学的には、フェリチンは、月経のある女性は1ミリリットルあたり70ng以上、男性と閉経後の女性は125ng以上を理想値と考えます。